2022年8月1日 20:30
本企画では、全国の飲食店が提供する料理のなかで、消費者が思わず写真を撮りたくなる「ばえめし」を紹介するとともに、メニュー開発者や実際に調理されているシェフにその誕生秘話などを語って頂きます。
第7回は、第6回のゲストである「三才」のシェフ 佐々木勇太さまよりご紹介いただき、メディアでも話題の“進化系焼きそば”の生みの親、「株式会社青二才」取締役専務 神谷 栄伸さんにお話を伺いました。
2022年4月に「YAKISOBA & GROCERIES 一服」をオープンされたとのことですが、オープンのきっかけを教えてください。
新型コロナウイルスの影響で、飲食業は普通に営業できなくなってしまったので、昼間の時間に営業できるものを考えたときに思い浮かんだのが、居酒屋「青二才」で人気のあった焼きそばでした。これをブラッシュアップして、“居酒屋が作る本気の焼きそばを作ろうと思ったんです。ラーメンは敷居が高く・競合が多いですが、焼きそばの専門店はまだ少ないのでやってみようと思いました。
メニューのこだわりポイントを教えてください。
元々「青二才」は居酒屋なので、つまみになる焼きそばを作りたいと思って開発していました。従来の焼きそばのように混ぜることはせずに、「麺」「肉」「たまご」「野菜」それぞれを楽しんでもらえるように盛り付けています。特に麺は小麦感を大切にしており、今も時期に応じて使う小麦や配合を調整してこだわり続けているので、まずは麺だけで食べていただきたいです。
お肉は、ソースと赤ワインで味付けをし、レトルト食品の製造に使用する機械で調理しています。普通に煮込むと煮崩れしてしまいますが、この機械は中心温度が120度くらいまで上がるので、中はしっかり柔らかいのにしっかりした形のお肉が出来上がります。
ソース神焼きそば(920円)
メニューのばえポイントは何ですか?
普通の焼きそばと異なり、具材を混ぜていないので、黄色・赤・緑・茶色の色味がしっかり出るのがポイントです。今は料理の写真をお取りいただくことも多いので、コントラストをはっきりさせて、写真映えを意識しています。麺の上にいっぱい具材を載せているので、是非麺リフトをして撮影していただきたいです。
このメニューを食べてほしいターゲットは?
全年齢層の方に食べていただきたいと考えていますが、もともとお酒のつまみの感覚で作っていて濃い目の味付けにしているので、「青二才」のお客さんである20~40代の方に特に好評いただいています。
「神焼きそば」開発のエピソードがあれば教えて下さい。
自分の好きな焼きそばをとことん突き詰めるため、まずは麺にこだわりました。中野に100年以上続く老舗の製麺屋さんがあるのですが、同じ中野区の飲食店ということで、 “何かやるなら一緒にやりましょう”と言っていただき、特注の麺を作っていただいています。もともとかなりの種類の麺を製造されているので、様々なタイプの麺をご提案いただき、試食を重ねて改良していきました。あの頃は麺を毎日5~6玉試食していたので6キロ太りました。(笑)試行錯誤の結果、とにかく美味しい麺が完成したので、それから開発が始まり、麵に合うソース、肉へと試作を重ねていきました。
麺にこだわり、“これだ”と決めてから始めたので、次はうち専用のソースを作りたいと考えて、京都のソースメーカーさんに開発をお願いしました。いち飲食店のためのソース開発ということで、最初は断られるかと思ったのですが、“コロナで大変な時期だからこそ、飲食店のためになりたい。一緒に開発しましょう”と言っていただきました。
京都と東京の行き来がしづらい時勢でしたので、麺とソースを送りあい、全部で10往復くらいやり取りを重ねて特製麺と相性の良いソースが完成しました。ソースの試作が、あがるたびに先方で麺を調理いただくので、“お陰様で焼きそばを沢山いただいております。と言われてしまったりもしました。
店舗ではレトルト食品の製造販売もやっていらっしゃいますが、始めたきっかけはなんでしたか?
働き方の選択肢を増やすために、取り組んでいます。うちの会社のスタッフは全員社員で、離職率が少ないんです。私自身27歳でこの会社を初めて、創業からずっと働いてくれている社員が多いのですが、年齢を重ねると飲食業で夜遅くまで働くのも大変になってきますし、家庭も持ったりと、ライフスタイルも変わってきました。新しい働き方を考えなきゃと思った時に、商品の製造なら、朝からきて夕方帰るスタイルで働くことができるので働く時間を調整できると考えて始めました。
今までECをやったことはなかったので挑戦的な取り組みですが、デザインや宣伝写真も自社のスタッフがイチから学んで手掛けています。
今後の展開について教えてださい。
提供している「神焼きそば」をミールキットにしようと思ってます。「神焼きそば」のいいところは、製麺業者さんが近所なので、毎日打ちたての麺を使用しているところです。やはり、打ち立ての麵とそうでないものでは味が違うんです。打ち立ての生麺を焼きそばで食べる機会はあまりないかと思いますし、蒸し麺ではなく、生麺から作る焼きそばの美味しさを味わっていただきたいと思っています。ご自宅で調理いただく手間はかかりますが、その分美味しいですし、是非「神焼きそば」をお楽しみいただきたいです。
今後の目標を教えてください。
もう少し出店数を増やしていきたいと思っております。小さな店舗でもできる焼きそばだけの店舗を増やしていき、多くの人に「神焼きそば」を味わっていただきたいと考えています。
人生最後に食べたいものはなんですか?
びっくりドンキーのハンバーグカレーをお腹いっぱいに食べたいです。僕は山奥の田舎出身で、大学で上京するまで外食でハンバーグを食べる機会が無かったのですが、初めてびっくりドンキーを食べたときに衝撃を受けました。美味しかったですし、ハンバーグとカレーを組み合わせるというダイナミックさにとても驚いたのを今でも覚えています。
プロフィール
1979年生まれ岐阜県出身。書道家の家庭にうまれ、書道を志し大学で上京。在学中アメリカへの留学を境に生業を模索。高校時代からの同級生に飲食店立ち上げの話を持ちかけられ飲食の道に入る。グローバルダイニングで勤めた後、27歳で現社長で高校時代からの同級生である小椋道太とダイニングバー「青二才」を始める。日本酒を専門とした店を数店舗経営し、他社の飲食コンサルティングも経験。現在は(株)青二才取締役専務としてコロナ禍を機にあらたにEC事業の設立や地方創生事業の一端を担うなど、会社のあたらしい成長に奮闘中。
「YAKISOBA & GROCERIES 一服」店舗情報
住所:東京都中野区新井1-15-12 1F
TEL:050-5872-0652
HP: https://aonisai.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/ippuk__/
アクセス:西武新宿線 新井薬師前駅 徒歩5分、JR 中野駅 徒歩10分
営業時間:
11:30~21:00
※food L.O 20:00 / drink L.O 20:30
定休日:無休
席数:6席(カウンター席のみ)
編集後記
“モノとモノで繋がるのではなく、人と人との繋がりでできる仕事が好き。”神谷さんが取材中に仰ったこの言葉が、とても印象的でした。社員の約9割が元お客さん、お取引先もほとんどが元々のお知り合いだそうです。また、取材の合間には、スタッフや常連さんと積極的にコミュニケーションをとっていらっしゃるお姿を拝見しました。人との繋がりをとても大切にされている神谷さんだからこそ、スタッフやお客様から慕われているのだなと実感しました。
今回ご紹介した「神焼きそば」、麺の小麦感と絶妙に絡んだソースが良くマッチしていて絶品でした。一見ボリューミーに思えましたが、いざ実食するとあまりの美味しさにペロリと完食してしまいました。取材を通して、神谷さんのお人柄と「神焼きそば」の美味しさに編集部員もすっかり魅了されました。
(ばえめし編集部:佐藤)