2022年5月26日 18:00
本企画では、全国の飲食店が提供する料理のなかで、思わず写真を撮りたくなる「ばえめし」を紹介するとともに、実際に調理されているシェフにその誕生秘話などを語って頂きます。
第5回は、第4回のゲストであるパティシエ 森井 美紀さんよりご紹介いただき、「cadet」シェフ 松城 泰三さんにお話を伺いました。
「cadet」をオープンされたきっかけを教えてください。
「cadet」のある神保町はオフィス街で、お仕事の接待や交流会が多いのですが、皆さん食事をしているけれど、どこか肩肘張っている、そんな印象があります。社交場としてのスイッチが入っている中でも、食事を通して、一瞬でもリラックスしてほしいと思い、このお店をオープンしました。都心にいながらも田舎のぬくもりや自然を感じてもらいたいという思いから、季節ごとに日本各地から仕入れた食材を主役にした料理を提供することをお店のコンセプトにしています。
今回ご紹介いただく“ばえめし”メニューは何ですか?
「大山鶏のロティ」です。これはランチメニューで提供しています。
プリフィックスランチ「大山鶏のロティ」1,700円(税込み)※前菜、パン付き
このメニューを食べてほしいターゲットを教えてください。
ランチメニューなので、このエリアで働く方々、オフィスワーカーです。午前の仕事でたまった疲れを癒し、元気が出るように工夫していますので、午後の活力にしていただきたいと思っています。
ご紹介いただいた“ばえめし”メニューのこだわりのポイントを教えてください。
ジューシーなお肉に仕上がるよう、くるっと丸めて塊にして、絶妙な焼き加減を研究して、こだわりました。また、丸鶏のガラでしっかり出汁をとり、ソースにしたり、ジャガイモはバターを沢山使い、キャベツはリンゴと炒めて赤ワインで煮込み、手をかけています。
ランチとディナーでこだわりの違いはありますか?
夜はこのエリア外の方にも来て頂きたいと思っています。ワインはフランス産と日本産だけに絞り、こだわっているので、料理もワインに寄り添うように作っています。
メニューチェンジをするタイミングについて、工夫があれば教えてください。
ディナーはその日仕入れ状況で提供メニューを変えていますが、ランチは、実は、変えていません。このエリアの属性かと思いますが、ランチタイムが限られている、働く方々は“あれ食べよう”と決めてからお店に行く方が多いと思うので、ランチメニューを変えるとストレスになるかと思い、鶏・豚・魚・牛・オマールエビのカレーの5メニュー固定で提供しています。
ディナーでは、基本の形がありつつも、その日の良い食材を生かしてアレンジしていきます。
食材の仕入れにもこだわっているとのことですが、仕入れの様子を教えてください。
まずは美味しいものとそれらを演出してくれる食器を探しに各地に伺います。ある程度目星は付けたうえで、生産者さんやお皿の作家さんを訪ねて地方に行き、気に入った素材を自分で交渉して仕入れています。
希少な食材だからこそ、最初は受け入れていただけないことも多々あります。時間をかけて生産者さんと交渉することで、少しずつ送ってくださり、今ではこの店のために取っておいていただけるようにもなりました。
松城シェフはご自身のことを“食いしん坊”と自負されていますが、エピソードが何かありましたら教えてください。
料理始めたての21歳のころにとあるレストランで食した「ノルウェーサーモンのマリネ」に感動して、ノルウェーまでサーモンを釣りに行ったことがあります。当時は焼き鮭のイメージが強くて、生のサーモンが新鮮だった事もありますが、“こんなにもおいしいものがあるのか”と衝撃を受けて、1週間有給休暇をとってノルウェーに行きました。どこで釣れるかを現地で聞き込みをして、釣具屋に交渉して釣り具を貸してもらい、ヒッチハイクで釣れる場所まで行って、大きなサーモンを釣りあげました。
今後の目標を教えて下さい。
神保町は、“カレー”や“喫茶店”が有名ですが、それ以外の選択肢として、「cadet」となればいいなと思っています。“カレー”を食べに神保町に行こう!みたいに、“cadet”のメニューが食べたいから、神保町に行こう!というようにお客様に思っていただけるお店になれたら嬉しいです。このエリアの一員として、より食が盛り上がるように一端を担って行きたいと思っています。
人生最後に食べたいものは何ですか?
自分で作ったペペロンチーノです。味覚・好みって個人差がありますが、パスタの硬さ、ソースの酸味、辛さ、風味香り、塩加減も全て自分好みに作ります。
シェフのお手製ペペロンチーノ、特徴は何ですか?
一言で表すと“シンプルなのに複雑”。あと、ニンニクを5片使います。火の入れ方を工夫しているのでニンニク臭さがなく、とても甘くなります。
最近気になるばえめしは何ですか?
中野にある“神焼きそば”です。神谷さんという方が考えたので、“神やきそば”という名前で、最近話題になっています。本来焼きそばは食材を全部一度ガッと炒めるところを、麺と野菜、お肉を別々に調理して、最後に合わせて盛り付けるのが特徴です。
(ばえめし編集部:TACHIOKA、佐藤 写真:JOSH)
ばえめし編集部後記:
新米編集部員の慣れない取材にも、気さくに答えてくださった松城シェフ。インタビューではシェフの“食材・生産者さんへの敬意”と“料理に対する熱い思い”を実感するエピソードを沢山伺うことができました。ご紹介いただいた「大山鶏のロティ」もジューシーで絶品!とっても美味しかったです。
また、おしゃれなお店って、どこか緊張しながら食事をすることが多いのですが、「cadet」はおしゃれなのに、気負わずにリラックスして食事ができる、そんな温かい雰囲気があります。今回は取材での訪問でしたが、プライベートでもまた伺いたいお店です!(佐藤)
プロフィール
1979年大阪府出身。一度会社勤めを経験後、食に対する強い関心から料理人の道へキャリアチェンジ。以降20年以上料理の世界に携わり、フランスのパリやブルゴーニュでの現場の経験もある。
世界各国の星付きレストランを食べまわり、数々の料理を研究。フレンチをベースにしながらも、ヨーロッパ各地のレストランや料理に触れたことにも影響を受け、ひとつの国にとどまらない自由な料理スタイルを確立。2021年にオープンした「cadet」では、自らが全国の生産者のもとへ足を運び、仕入れたこだわりの国産食材を使用したメニューを展開する。
お客様に対しても、自分のスタイルや使い方で気軽にレストランや料理を楽しんでいただきたい、との思いで今日も真摯な笑顔で厨房に立っている。
「cadet」店舗情報
住所:東京都千代田区神田錦町3-22 テラススクエア 1F
TEL:03-6811-0125
Instagram:https://www.instagram.com/cadet_french/
アクセス:東京メトロ半蔵門線・都営三田線・都営新宿線 神保町駅から287m
(神保町駅A9出口より徒歩2分)
営業時間:
LUNCH / 11:30~15:00(L.O.14:00)
DINNER / 17:30~23:00(L.O.21:00)
定休日:土曜・日曜・祝日及び月曜日ディナー
席数:30席